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奥又白(前穂高東壁)への一人山行 |
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上高地(6:00)−新村橋(9:00)−中畠新道取付(11:00)−奥又白池(14:00) 中畠新道取り付きは沢が崩れていて分かりにくいが、幸い北海道大学のパーティーが先行してルートを見つけてくれる。取り付いたとたん素晴らしい毛並みの夫婦猿が歓迎してくれる。ナナカマドの実を求めて降りて来たのだろう。一応の先人なので「コンニチワ」と挨拶するとさっさと消えてしまった。40年前(山岳部現役時代)とはすっかり違う厳しい登りの連続で、うまく息が整わない。 帰路への不安が時々頭をかすめるが、折角のチャンス!登るしかない。 視界が開けるにつれ、前穂高北尾根の岩が所々白く剥がれ痛々しい。やっとの思いで辿り着いた奥又白のテント場は、ゴミもなく池自体昔より澄んでいて、まさに別天地だ。テントは私を含めて4張り。 北大2張り、芸術家風1張り、私1張りだ。
9月13日(月) 今日のコースを3通り考えていた。 1.前穂高東壁。 2.北尾根5.6のコルから前穂高。 3.前穂高から明神岳である。 このうちとりあえず、東壁の写真を優先することで出発する。芸術家風の男は、前日北尾根8峰に宿営、今日は明神岳5峰の頂上にテントを張るとのこと。1ケ月近く人気のない場所ばかりを選んで山暮らしを楽しんでいるらしい。北大は既に2パーティーが4峰岸壁に取り付いている。遠くから見ても、かなり苦労している様子が窺える。 私はDフェースに近づこうとガラ場を横切ろうとするのだが、3.4.5峰からの落石が頻繁で沢筋は危険と判断する。1人山行でヘルメットもなく、遠くからの写真で我慢せざるをえない。明日以降の北尾根5.6のコルへのルートも下部は寸断され、岸壁の崩壊が続いている様子が窺える。 明神館の主人が「奥又白の岩は崩壊がひどく、沢筋は危険」と言ったことが本当だったことを目のあたりにした。この様子では、右岩陵やDフェースを登るのは至難のことだろう。この日、北大の2パーティーの内、1パーティーは4峰頂上でビバークしたという。
9月14日(火) 夜半から激しい風雨、ほとんど終日沈殿。昨日、明神岳5峰の頂上にテントを張ると言っていた芸術家風の男はどうなったことか。芸術家風に変わって名古屋大学のOB3名がずぶ濡れで入山して来る。 夕方やっと雲が切れ、素晴らしい景色を見せてくれる。昨夜ビバークした北大パーティーも何とか涸沢へ降ったとのこと。 9月15日(水) 早朝、澄み切った空に遠く富士山、南アルプスが眺められる。1人山行では、前穂高岳、明神岳の頂上には立てなかったが、山の大きさ、自然の偉大さに心を打たれ二度と来ないかもしれない奥又白を後にする。降りも無事乗り切って、振り返る前穂高東壁は紺碧の空に気高くそびえ立っていた。
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